ライカ期ドリスヴァンノッテンのジャッコーニです。柔らかなグレーのウール地にライ麦色のウィンドウペイン。
私が良いと思っている箇所は胸や肩周りでして、薄いパッドと広めな作りで肩が強調されているのですがよく見るとその少し内側にパッドのステッチが見えます。これがダミーの肩線の役割をすることで見た目にはきちんと見えながら決して大袈裟ではないリラックスしたサイズ感が現れます。コートとしてもジャケットとしても完成度の高い一着です。

サイズ : 48
カラー : gray
素材 : wool 100%
肩幅 : 45cm
身幅 : 50cm
着丈 : 83cm
袖丈 : 62cm
ベルギー製

こういった柔らかで男性的な色気はイタリアのサルトが産み育てアルマーニが広めた男性像で、初期のドリスにも見られるものだと思います。冷戦が終わり"このまま世界は良い方に進んでいく"という楽観に包まれる90年代前半、そんな時代と呼応するように初期ドリスのランウェイは多幸感に包まれユニセックスな舞台にはギリシャ彫刻のような高身長・甘いマスク・マッチョな男性モデルが笑顔を振りまいてウォーキングを披露します。(これには彼のゲイ感覚が多分に影響していると思いますが)彼の理想の男性が着るべき洋服は、硬く構築的でしかめっ面をしたイギリスのテーラードでは駄目で、盛り上がった厚い胸板に美しい生地を優雅に垂らす様なイタリア的なソフトジャケットが必要だったのでしょう。