久石譲 

ワンダーシティ・オーケストラ

WONDER CITY ORCHESTRA

CD「INFORMATION1 / インフォメーション1」

TKCA-30670 1992年8月25日

1982年発表、久石譲の実質的1stアルバム。

国内外問わず再評価が高まる現代音楽家/打楽器奏者、高田みどりらのムクワジュ・アンサンブルへ提供した国産ミニマルミュージック名宝『MKWAJU』から1年後となる本作は、 ミュージック・コンクレート的な実験性と、YMO諸作品にも通ずる最先端のポップミュージックが邂逅した独創的な作品。

池田典代のコーラスも瑞々しい電化ニューウェーヴ・レゲエ:A4"Changing"や、MKWAJUでのミニマルなアプローチを発展させたディスコ・フュージョンB1"African Market"ほか、一音一音がロジカルに妥協なく響く全8曲。

氏のルーツを探る上で重要度の高い一枚。

1.「INFORMATION」 曲・編：久石譲

2.「WONDER CITY」 詞：Marty Bracey 曲・編：久石譲

3.「POP UP! SHAPE UP!」 詞：久石譲・岩崎工 曲・編：久石譲

4.「CHANGING」 詞：当山ひとみ・倉敷光 曲・編：久石譲

5.「AFRICAN MARKET」 詞・曲・編：久石譲

6.「HIGHWAY CRACKER」 詞・曲・編：久石譲

7.「INFORMATION」 曲・編：久石譲

8.「ISLANDER」 曲・編：久石譲

＜support musician＞

池田典代：vocal・chorus

井上ひろみ：vocal・chorus

岩崎工：vocal・chorus

平沢幸雄：guitar

高橋ゲタ夫：bass

井上茂：drums

鈴木さえ子：drums

森谷順：drums

佐々木章：gliss bass

黒崎昇：tabla・madoll

荒川勝：clapping

Penny（当山ひとみ）：chorus

WONDER IKEBUKURO PERFECT CHORUS：chorus

磯崎仁：vocoder

produced by 久石譲・荒川勝

engineered by 佐々木章

● 若き日の巨匠がデビュー作にして嬉々として電子楽器を駆使して作り上げた魅惑のエレクトリックミュージックの好盤

 現在でこそ映画音楽の巨匠としてその名を知らしめる久石讓も、若かりし頃はミニマルミュージックに影響を受けた現代音楽新世代の旗手としてキャリアを始め、70年代後半にはBrian EnoやTangerin Dreamなどのアンビエントなエレクトリックミュージックにも感化され、80年代に入る頃には最新鋭の機材を取り揃えながらシンセサイザーをふんだんに使用した前衛的POPSへのアプローチを試みるようになります。そして1982年にはいよいよ自身のソロプロジェクトとして「WONDER CITY ORCHESTRA」の活動を開始、その足がかりとしてリリースされたのが彼の実質的なソロデビュー作品となる本作です。

 久石といえばあの「風の谷のナウシカ」の劇伴で一躍有名になるかたわら、80年代中期のPOPSサウンドを激変させたサンプラーワークステーションFairlight CMIユーザーとして、The Art Of Noiseに影響されたバキバキのサンプリングサウンドで、そのアヴァンギャルドな側面を垣間見せていましたが、本作はまだFairlight導入前ということで、Prophet5を中心とした芳醇なアナログシンセと近未来的なヴォコーダーが活躍する、純粋なエレクトリックミュージックに仕上がっています。また、本作は「WONDER CITY ORCHESTRA」名義ですが、前述の通り久石のソロユニットという位置付けで、豊富なプレイヤー陣はゲスト扱いとなっているため、主役はシンセサイザーやシーケンサーといった電子楽器です。MC-4によるシーケンスはミニマルミュージック志向であった彼だからこその全く違和感のない馴染みやすさを演出、コクとウネりのあるシンセベースやスウィープサウンドでその深みを味わわせてくれる旨味溢れるシンセパッドは本作におけるサウンドの核となり、その思い切りの良いエレクトリックサウンドの使い方は82年当時からしてもYMOを向こうに張るくらいのクオリティを備えていたのではないかと思われます。しかしながらやはりこの時期の久石の根底に流れているのはミニマルフレーズへの憧憬であり、タイトルチューン「Information」に代表される変拍子でリピートされるシーケンスを電子的に制御することが彼が本質的に試したかったことなのでしょう。

 結果としては82年というテクノポップブームも下火になりつつあった時期に、一風変わった新人アーティストが果敢にチャレンジした実験的エレクトリックミュージック作品として足跡を残した作品と言えますが、2年後の84年には前述の「風の谷のナウシカ」によって彼の音楽的環境は激変していくことになっていきます。それでも彼のエレクトリックサウンドへの執着は、2ndソロアルバム「α・BET・CITY」に引き継がれていくことになります。

 

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