異能の歌手ドダ・コンラッドは1905年ポーランド生まれ。フランスでナディア・ブーランジェとともに音楽活動を行い、既存の価値観を打ち破るような歌唱芸術を残した人です。米VOXや仏LUMEN等に録音のある人ですが、これは珍しい母国ポーランドのMUZA録音。この「水車小屋の娘」も尋常ではない表現です。メロディ美しく歌うのではなく、声の存在感を浮き立たせるような言葉の芸。第1曲から新聞の切れ端のような詞のゴツゴツとした生々しい質感が伝わってきます。人間が歌っているのだと。立ち止まったり、急旋回したり、メロディーという航路を使わない歌はこんなにもリアルな存在感を放つのか。といってもメロディを廃するわけでもなく、第6曲の旋律には自在な歌いまわしを感じますし、第8曲ではただの語りが愛の語らいへと変貌する。第10曲「涙の雨」なんて特に素晴らしく、自然に語っているだけなのに、まるでそこから歌が生まれるようで鳥肌が立ちました。歌と言葉のせめぎ合い、歌の発生地点、言葉が言葉でなくなる離陸する瞬間。コンラッドは言葉の「力」を試しているのか。第13曲「緑色のリュートのリボンを手に」では翼竜の化石を見るように、言葉と言葉の間になにか膜が見えてくる。第16曲「好きな色」は圧巻。表情の凄まじさ、声の芸術は、日本の邦楽界なら人間国宝にでもあるかのような深みを感じます。第19曲「水車職人と小川」での、呻くでもない、くぐもったような声の存在感。最終曲「小川の子守唄」は童謡を歌うようにして、永遠に続くような回転をみせている。静かな、人気のない歌なのです。この人が歌うたびに常識が一皮剥けてその背後のリアルが見え隠れする。心揺さぶる名唱です。大推薦。

盤質：盤面溝とも良い状態。ほとんど美品。

ジャケ：共通ジャケ。

【盤質評価】全面視聴してから出品しています。区分は以下のものを採用しておりますが、必要に応じて詳しく説明するようにしています。

美品(Ｍ)：新品並みの状態。

ほとんど美品(ＮＭ)：極浅い擦れや軽微な傷。

きわめて良好(ＥＸ)：年相応の擦れや浅傷。ひどいものはなし。

良好(ＶＧ)：擦れや傷などが目立つ。＊音溝が活きてなければ出しません。

■丁寧に梱包して送ります。またトラブルなどには誠実に対処いたしますのでよろしくお願いいたします。